
薄毛への対応には、薬などで発毛や抜け毛の抑制を目指す治療と、頭皮アートメイクのように地肌の透けを目立ちにくくする施術があります。それぞれ目的や仕組みが異なり、期待できる変化や注意点も変わります。
このコラムでは、頭皮アートメイク、内服薬・外用薬、自毛植毛、PRP療法やエクソソームを用いた治療などについて、特徴とメリット・デメリット、選ぶ前に確認しておきたいポイントを解説します。
頭皮アートメイクとは?
頭皮アートメイクで期待できる変化
頭皮アートメイクは、頭皮に細かなドット状の色素を入れ、分け目やつむじなどの地肌の透けを目立ちにくくする施術です。髪を生やしたり、薄毛の進行を止めたりする治療ではありません。
残っている髪や頭皮の状態、普段の髪型に合わせて、施術範囲やドットの濃さ・密度を調整します。周囲になじむ見え方を目指しますが、必要な回数や仕上がりには個人差があります。
頭皮アートメイクのメリット
気になる分け目やつむじに色素を入れることで、髪と地肌の色の差をやわらげ、地肌の透けを目立ちにくくすることを目指せます。
施術直後から色素による見た目の変化が生じます。ただし、直後の見え方がそのまま最終的な仕上がりになるとは限らず、頭皮の回復や色素の残り方を確認しながら施術を進めます。
頭皮アートメイクのデメリットとリスク
施術後に赤み・腫れ・かゆみ・ヒリヒリ感などが生じることがあります。また、感染や色素へのアレルギー反応、ドットのにじみや色の変化などのリスクがあります。
仕上がりが希望と異なる場合でも、入れた色素を簡単に除去できるとは限りません。施術前に症例写真などを確認し、ご希望の範囲や見え方、想定されるリスクについて説明を受けることが大切です。
費用は、施術する範囲や回数によって異なります。初回の費用だけでなく、完成までの総費用と、リタッチが必要になった場合の対応や料金も確認しておきましょう。
施術中の痛みについて
頭皮アートメイクは針を使用するため、チクチクとした刺激や痛みを感じることがあります。感じ方には個人差があります。
当院では、麻酔を使わずに受けられる方が多くいらっしゃいます。不安や痛みが強い場合は、休憩を挟むほか、状態に応じて笑気麻酔や鎮痛剤による対応を検討します。痛みを我慢せず、施術中もお伝えください。
施術前後の注意点
施術できるかどうかや適した範囲は、薄毛の原因、頭皮の状態、ご希望を確認したうえで判断します。頭皮に炎症などがある場合や、治療中の病気・服用中の薬がある場合は、事前にお伝えください。
施術後は頭皮を強くこすらず、洗髪などについて当院からお伝えする注意事項を守ってください。赤みや痛みなどが強くなる場合は、当院へご連絡ください。
当院では、カラーリングやパーマは施術前後1週間控えていただいています。予定がある場合は、施術日との間隔を事前にご相談ください。
内服薬・外用薬による薄毛治療
内服薬の種類と特徴
フィナステリド
成人男性の男性型脱毛症(AGA)に対して、国内で承認されている内服薬です。脱毛に関わるジヒドロテストステロン(DHT)の生成を抑え、AGAの進行を遅らせます。女性への適応はありません。
デュタステリド
成人男性のAGAに対して、国内で承認されている内服薬です。DHTの生成に関わる酵素の働きを抑えます。女性への投与は禁忌です。フィナステリドとの選択は、症状や副作用などを踏まえて医師が判断します。
ミノキシジル(内服)
ミノキシジルの内服薬は国内未承認で、外用薬とは区別が必要です。日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」では、AGA・女性型脱毛症に対する内服は推奨度D(行うべきではない)とされています。
多毛症のほか、動悸やむくみなど、心血管系の副作用にも注意が必要です。
スピロノラクトン
高血圧やむくみなどの治療に用いられる利尿薬です。薄毛治療への使用は、日本では承認された効能・効果に含まれない適応外使用となります。
高カリウム血症や血圧低下などに注意が必要で、使用する場合は医師による診察や検査が必要です。
内服薬のメリットとデメリット
フィナステリドやデュタステリドによる治療では、手術を伴わずにAGAの進行を抑え、毛髪の状態の改善を目指します。
一方、効果の確認には時間がかかり、継続中の薬代や診察費も考慮する必要があります。効果の出方には個人差があり、医師の指示に沿って服用しながら経過を確認します。
副作用は薬ごとに異なります。例えば、フィナステリドやデュタステリドでは、性欲低下や勃起機能不全、肝機能障害などが起こることがあります。
ミノキシジル内服は、顔や体毛が濃くなることも
特に知っておきたいのが、ミノキシジル内服による「多毛症」です。頭髪だけでなく、顔や腕・脚など、望んでいない部位の毛まで濃くなることがあります。
髪を増やしたいと思って始める治療でも、顔や体毛にも影響する可能性があります。体毛を濃くしたくない方にとって、治療を選ぶうえで重要なデメリットです。
服用を検討する際は、頭髪への効果だけでなく、多毛症の可能性や身体への影響についても説明を受けてください。服用中に気になる変化がある場合は、処方した医師へ相談しましょう。
ミノキシジル外用薬について
ミノキシジル外用薬は、頭皮に塗布する薬です。国内で承認された製品があり、壮年性脱毛症に対する発毛や抜け毛の進行予防を目的に使用されます。
使用できる人や濃度、使用方法は製品によって異なります。頭皮のかゆみやかぶれなどが生じることもあるため、説明書を確認し、医師や薬剤師に相談したうえで使用してください。
薬を使用する際の注意点
薄毛の原因によって、適した薬は異なります。自己判断で薬を選んだり、量を増やしたりせず、診察で必要な治療を確認することが大切です。
持病、服用中の薬やサプリメント、妊娠・授乳の有無などは、使用できる薬の判断に関わります。受診時に医師へ伝え、定期的に効果と副作用を確認してください。
自毛植毛とは?
自毛植毛の仕組みとメリット
自毛植毛は、後頭部などから自分の毛包を採取し、薄毛の部分へ移植する手術です。自分の毛髪を利用して、薄毛の部分の見た目の改善を目指します。
希望する範囲や密度に対応できるかは、採取できる毛包の状態などによって異なります。期待できる仕上がりは診察で確認する必要があります。
自毛植毛のデメリットと注意点
術後には痛みや腫れが生じることがあり、出血・感染・傷あとなどのリスクもあります。また、移植した毛包が生着しない可能性もあります。
手術にかかる費用だけでなく、術後の回復期間や通院、日常生活での制限についても、事前に確認しておきましょう。
移植していない部分では薄毛が進行する場合があります。植毛後も経過の確認や治療が必要になる場合があるため、長期的な方針について医師と共有することが大切です。
PRP・HARG療法・エクソソームについて
薄毛治療では、成長因子などを利用する方法が「再生療法」として紹介されることがあります。ただし、使用する材料や仕組み、有効性・安全性の根拠は、治療法ごとに異なります。
PRP療法
PRP(多血小板血漿)療法は、自分の血液から血小板を多く含む血漿を取り出し、頭皮に注入する治療です。血小板に含まれる成長因子の働きを利用して、毛髪の成長を促すことを目的としています。
日本皮膚科学会の2017年版ガイドラインでは、PRPを含む成長因子導入療法は、有効性や安全性の検証が十分ではないとして、推奨度C2(行わないほうがよい)に分類されています。
HARG療法
HARG療法は、成長因子などを含む製剤を頭皮に注入し、毛髪の成長を促すことを目的とした治療です。
成長因子を用いる方法でも、使用する製剤や投与方法ごとに有効性と安全性の確認が必要です。治療名だけで判断せず、使用する製剤、効果の根拠と限界、ほかの治療法との違いについて説明を受けてください。
エクソソームを用いた治療
エクソソームは、細胞から分泌され、細胞間の情報伝達などに関わる小さな袋状の物質です。これを用いる治療は、幹細胞そのものを頭皮に注入する治療とは異なります。
使用する製剤や投与方法ごとに、有効性と安全性を確認する必要があります。体内にも存在する物質だからといって、投与した場合の副作用のリスクが低いとは限りません。
製剤の品質や管理方法、効果を示す根拠、長期的に分かっていない点についても、医師から説明を受けることが大切です。
期待される点とデメリット・注意点
これらの治療は毛髪の成長を促すことを目的として行われますが、期待できる変化や根拠の確かさは一律ではありません。誰にでも同じ効果が得られるわけではなく、効果の持続期間や必要な回数も確認が必要です。
頭皮に針で注入する方法では、痛み、出血、腫れ、感染などのリスクがあります。切開を伴わない方法でも、身体への負担やリスクがあります。
複数回の施術が提案される場合は、回数と総費用、効果を評価する時期、継続や中止を判断する基準についても確認してください。
低出力レーザー・LEDによる治療
低出力レーザーやLEDを使う治療は、頭皮に光を照射し、毛髪の成長を促すことを目指す方法です。日本皮膚科学会の2017年版ガイドラインでは、適切な機器を用いた治療が選択肢として示されています。
手術を伴わない一方、機器の種類や照射条件によって、効果の根拠や使用方法は異なります。頭皮の乾燥、かゆみ、刺激感などが生じることもあるため、使用する機器、治療期間、費用、注意点を確認してください。
薄毛治療・施術を選ぶ前に確認すること
薄毛の原因と、希望する変化を確認する
薄毛への対応を選ぶ際は、まず診察で原因や進行度を確認し、どのような変化を希望するかを医師と共有することが大切です。
発毛や抜け毛の抑制を目指す治療と、地肌の透けを目立ちにくくする頭皮アートメイクでは、目的が異なります。希望する見え方に加え、体調や生活状況、予算も踏まえて検討しましょう。
「最新」「最先端」という言葉と、治療の根拠
「最新」「最先端」という言葉だけで、従来の治療より効果や安全性が高いと判断することはできません。
薬物療法には薬ごとの副作用や継続に伴う負担があり、自毛植毛には手術のリスクや術後の回復期間があります。新しい治療についても、期待できる変化を支える根拠と、まだ分かっていない点を確認することが大切です。
治療期間・総費用・副作用への対応を確認する
治療や施術を始める前に、次の点を確認しておきましょう。
- 期待できる効果と限界、ほかの方法との違い
- 想定される副作用・リスクと、症状が出た場合の連絡先
- 必要な回数や期間、効果を評価する時期
- 診察・検査・薬・追加施術を含めた総費用
- 継続・変更・中止を検討する際の方針
説明と診療体制を確認してクリニックを選ぶ
クリニックを選ぶ際は、医師や施術者の経験に加え、診察や説明の内容、施術後の相談体制も確認しましょう。
症例写真を見るときは、施術前後の撮影条件や施術回数、経過期間にも注目してください。他の方の症例が、ご自身の仕上がりを保証するものではありません。
費用や口コミだけで決めず、効果とリスクの両方について説明があり、疑問を確認できる医療機関を選ぶことが大切です。
当院の頭皮アートメイク
当院の頭皮アートメイクは、分け目やつむじなど、気になる地肌の透けを目立ちにくくすることを目指す施術です。薄毛の原因や頭皮の状態、ご希望を確認し、施術できるかどうかや適した範囲を判断します。
髪を生やしたり、薄毛の進行を止めたりする効果はありません。仕上がりには個人差があり、赤み・腫れ・かゆみ、感染、色素へのアレルギー反応などのリスクがあります。
カウンセリングでは、希望する見え方、施術範囲や回数、費用、施術前後の注意点についてご確認ください。
Q&A
Q.薄毛治療の効果はどれくらい持続しますか?
A.治療法や個人の状態によって異なります。AGAの薬物療法では、効果を維持するために継続が必要になることがあります。自毛植毛後も、移植していない部分の薄毛が進む可能性があります。
頭皮アートメイクのリタッチは、当院では完成から2〜3年を一つの目安としています。ただし、色素の残り方には個人差があり、必ずその時期まで持続することや、その時期にリタッチが必要になることを意味するものではありません。実際の見え方やご希望に応じて判断します。
Q.薄毛治療は痛みを伴いますか?
A.治療・施術によって異なり、感じ方にも個人差があります。頭皮アートメイクや頭皮への注入治療では、針による刺激や痛みが生じることがあります。自毛植毛では、術後に痛みや腫れが出ることがあります。
痛みが不安な方は、施術前に対応方法をご確認ください。
Q.薄毛治療は保険が適用されますか?
A.AGAの治療は自由診療です。一方、円形脱毛症などでは、治療内容によって保険が適用される場合があります。診断や治療法によって扱いが異なるため、受診する医療機関に確認してください。
Q.女性も薄毛治療を受けられますか?
A.はい。女性の薄毛にも、原因や状態に応じた治療・施術を検討できます。ただし、体調や妊娠・授乳の有無などによって、使用できる薬や適した方法は異なります。
診察で原因や状態を確認したうえで、ご自身に合った対応を選びましょう。
まとめ
薄毛への対応は、発毛や抜け毛の抑制を目指すのか、地肌の透けを目立ちにくくしたいのかによって、選択肢が変わります。
治療名や新しさだけで判断せず、期待できる変化と限界、副作用やリスク、必要な期間と総費用を確認することが大切です。薄毛の原因や頭皮の状態、ご自身の希望を踏まえ、納得できる方法を検討しましょう。
参考資料
- 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」
- PMDA 電子添文:フィナステリド錠/デュタステリドカプセル/アルダクトンA(スピロノラクトン)
- 日本再生医療学会「細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス(第1版・2024年)」
- FDA「Tattoos & Permanent Makeup: Fact Sheet」
- NHS「Hair transplant」
- 国立病院機構 岩手病院「AGA外来」
- 日本皮膚科学会「円形脱毛症診療ガイドライン2024」
参考資料確認日:2026年10月11日。本文中の推奨度は、記載した年版のガイドラインに基づくものです。